AO治療法の説明

悪性骨軟部腫瘍症例に対するアクリジンオレンジ治療法研究の説明

AO治療の目的

手術風景

四肢および体幹部に発生した原発性悪性骨軟部腫瘍の外科的腫瘍切除は広範囲以上の切除縁を確保することが必要であるが、その場合正常な骨、筋肉、神経、血管を犠牲にしなければならないことが多く、人工骨や自家処理骨移植、神経血管移植などの種々の患肢再建術を駆使しても温存患肢の機能は荷重歩行が可能な程度にしかならない。

近年化学療法の進歩に伴い骨肉腫やユーイング肉腫などの悪性骨腫瘍、滑膜肉腫、横紋筋肉腫、原始神経芽胚腫瘍(PNET)などの悪性軟部腫瘍患者の生命予後は飛躍的に改善し、10年以上の長期生存例も増加してきている。このような長期生存患者の多くは単に歩けるだけの患肢機能では満足できなくなってきている。

最近では他のがん領域でも患者のQOLを重視した、臓器機能をできるだけ温存する縮小手術が取り入れられてきている。悪性骨軟部腫瘍領域でも放射線照射の併用や、強力な術前化学療法などにより腫瘍の切除縁をできるだけ縮小する試みが行われているが、辺縁切除程度に縮小しても患肢機能はまだ不十分である。

今回のAO-PDTおよびAO-RDTは腫瘍細胞だけを確実に殲滅し、正常組織を温存できるため術後患肢機能は術前と遜色ない程度にまで回復できる可能性が高い。それゆえ、本治療法が臨床応用可能になれば悪性骨軟部腫瘍患者のADLは著しく向上し、健康人と同様な社会生活を過ごすことができ、患者の得る利益は計り知れないものがある。

研究方法

AOを用いた光線および放射線力学的療法

AO-PDT

  1. 術中生検組織で悪性骨軟部腫瘍の診断が得られ、専用の設備のある施設では生検腫瘍組織を培養液に入れAO溶液に暴露後、青色励起光を照射して腫瘍に結合したAOから発生する緑色の蛍光の有無を確認する。蛍光が確認できた症例にAO-PDTおよびAO-RDTを施行する。
  2. 化学療法の効果の期待できる腫瘍では術前化学療法を行った後に腫瘍切除を行うが、化学療法無効症例は永久標本で診断が確定した後に直ちに手術を行う。
  3. 手術は全身麻酔下に腫瘍被膜に達し、可能な限り被膜外に辺縁切除を行うが、正常組織との剥離が困難な場合や、骨内病変は掻爬術で病巣内切除を行う。基本的に正常な骨、筋肉、神経、血管などの患肢機能に大きな影響を及ぼす組織は腫瘍被膜と隣接していても温存する。骨破壊が高度で掻爬で骨組織が消失する場合は最小限の骨部分切除を行うが、再建術には自家骨ないしはハイドロキシアパタイト移植で対応して、人工骨・関節置換術はできるだけ行なわない。
  4. 次に腫瘍掻爬後の術野を生食で十分に洗浄し、1μg/mlの濃度のAO溶液を術野全体にまんべんなく局所投与する。
  5. 強力なキセノン光源有する手術用蛍光顕微鏡視下に青色励起光を照射し、残存腫瘍から発する緑色蛍光を確認して超音波メスで血管神経を損傷しないように腫瘍だけを切除吸引する(Photodynamic Surgery:AO-PDS)。この操作を腫瘍からの蛍光が認められなくなるまで繰り返し、肉眼的に確認できる腫瘍塊は完全に切除する。
  6. 蛍光顕微鏡がない場合は、150W以上の強力なキセノン光源の照射装置を用いて10,000ルクス以上のキセノン全光を術野に10〜20分間照射してPDTを行う。
  7. AO溶液を周囲組織に局所注射した後、洗浄を行わず最小限の患肢再建術を施行して術野を閉創する。
  8. 患者が麻酔から覚醒した後直ちに本院放射線科の放射線治療室で照射野を決定した後に5GyのX線照射を1回照射する。照射は翌日でも可能とする。
  9. 化学療法に感受性のある症例では術後創の治癒を待って術後化学療法を施行する。また、放射線感受性のある症例には通常の術後放射線治療も加える。